バーバラ・ルーシュ
Barbara Ruch

米国ニューヨーク州ニューヨーク市にある
コロンビア大学東アジア言語文化学部日本文学・文化名誉教授。
1968年に自ら設立した国際研究機関、中世日本研究所所長。

日本文学・文化の優れた研究者、教育者として知られる一方、
様々な研究機関を設立し、数多くの国際的プロジェクトを推進。
米国はもとより、ヨーロッパ、さらには日本における日本研究を促進し、
日本文化の理解を深めてきた。

ペンシルベニア州フィラデルフィア市出身。
1954年、インディアナ州のアーラム大学を卒業。
アメリカン・フレンズ奉仕団のスタッフとして数年間、日本に滞在。
その後、フィラデルフィアに戻り、
1960年、ペンシルベニア大学より日本文学において修士号を取得。

1965年には、コロンビア大学より博士号(中世日本文学専攻)を取得。
コロンビア大学大学院在学中は、ドナルド・キーン、角田柳作、
アイヴァン・モリス、白戸一郎の各教授のもとで学び、
その間、京都大学に留学し、
阪倉篤義、林屋辰三郎、岡見正雄の各教授に師事。

ハーバード大学にて数年間教鞭を執った後、
ペンシルベニア大学に移り、
1968年、国や大学の枠を越えた研究機関である
中世日本研究所を設立。

日本の中世物語文学研究の第一人者として知られ、
日本国内外を問わず文化研究において見過ごされていた
鎌倉・室町時代に光をあてることに力を注ぎ、
とりわけ絵解き研究を開拓。

また、奈良絵本研究の活性化にも大きな役割を果たし、
20世紀初頭に海外に流出し、
日本の研究者にはその存在すら知られていなかった
大量の奈良絵本を、アイルランドのダブリンほか欧米各地で発見。
1970年代後半にはロンドン、ダブリン、ニューヨーク、東京、京都で
奈良絵本の展示会と国際会議を組織する。

日本の人文科学における研究成果をはじめとした
学際的・国際的な活動が認められ、
1991年、第一回南方熊楠賞を受賞。
さらにその翌年、
日本語での著作『もう一つの中世像』(思文閣、1991年)により
青山なを賞を外国人としてはじめて受賞。

1984年にコロンビア大学に移る際に、中世日本研究所も移動。
1986年にはドナルド・キーン日本文化センターを
コロンビア大学に設立、初代所長を務める。
1996年、同センター設立10周年記念として、
設立協力者の一人であった安部公房の記念祭を
ニューヨークにて開催。
安部公房による演劇、映画、音楽を上演し、写真展も開催。
その企画、指揮にあたる。

ここ10年ほどは、従来男性の精神生活に焦点の当てられがちであった
日本の宗教の研究をより包括的なものにしていくことに力を入れている。
これまでの日本の宗教史といえば、専ら男僧の残した文書、
男僧院に残された文書をもとに研究が進められるのが常であった。

そこで、これまでの日本宗教史、文化史において
見過ごされてきた部分、すなわち、尼僧や宗教に関わった女性が、
日本への仏教の導入およびその伝播において
制度機関の設立者ならびに保護者として果たした役割や、
今日の門跡尼寺のルーツとなる尼寺院のネットワーク形成において
果たした役割を発掘していこうというものである。

日本で最初の女性禅師である無外如大禅尼(1223-1298)との
出会いをきっかけに、
1993年、国際共同研究プロジェクト「尼門跡寺院調査」を開始。
同プロジェクトは、現在も中世日本研究所によってルーシュの指揮のもと
続けられている。
門跡様方の信を得たことにより、国や大学の枠を越えた
このプロジェクトの研究チームは、これまで眠っていた古文書を
調査する許可を受け、現在、明治以前の女性の神仏信仰に関する
文書の発掘に力を注いでいる。

こうした活動の一つの総決算として、1998年11月21日より23日にかけて
ニューヨークにて、「日本史における尼寺文化」と題する
大規模な国際シンポジウムを企画。
シンポジウムと同時に、無外如大禅尼を鑽仰する700年遠忌法要、
ならびに門跡尼寺に伝わる貴重な品々を一同に集めた
展覧会「尼門跡寺院の秘寶」も開催。

1997年以降は、コロンビア大学における邦楽カリキュラムの
強化とともに、ニューヨーク市における邦楽の普及にも尽力している。

以上のような日本文化の理解への長年の献身的努力と
研究業績が認められ、
1999年4月、日本政府より勲三等宝冠章を授与される。

2000年3月には大阪府より、アジア・欧米の日本研究者一人に贈られる
山片蟠桃賞を受賞。
さらには皇后陛下御自身も門跡尼寺調査・修復に
御関心を寄せて頂き、資金援助を賜るという恩恵にもあずかる。

2002年には、明治以前の女性と仏教史をテーマとした
西洋言語での初めての出版物『Engendering Faith』
(ミシガン大学のCenter for Japanese Studiesから出版、2002年)を編著。

尼門跡寺院調査・修復プロジェクトをさらに進めていくため、
2003年、中世日本研究所(ニューヨーク市)の設立35周年を機に、
京都の大歓喜寺(大聖寺門跡の菩提寺)に新たなセンターを開設。
記念行事の一環として、江戸時代の皇女尼僧の手による仏教美術に
焦点を当てた展覧会「尼門跡と尼僧の美術」(野村美術館)を
後援する。

2006年にはSaeko Ichinohe Dance Company of New Yorkより、
日米文化交流に貢献した人物に贈られるCultural Bridge Awardを受賞。
同賞はこれまでにドナルド・キーン(学者)、クルト・マズア(指揮者)、
五嶋みどり(バイオリン奏者)らが受賞している。

 
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